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2025.11

デジタルセールスの本質──営業が変わる“買い手主導時代”の新常識

    ※本記事は、現場で年間200件以上の営業支援を行う
    コレタ セールスエキスパート・佐藤啓介による寄稿です。
    営業DX導入に悩む企業が、明日から実践できるヒントをお届けします。

    はじめに:個人の営業力だけで、成果の差が生まれる時代は終わった

    「うちの営業は人によって売上が大きく違う」
    「トップ営業のやり方を真似しても、再現できない」
    「AIとか営業DXとか言われても、結局、営業はトップ営業に売らせた方が良い」

    ——そんな悩みを抱える営業責任者・営業マネージャーは多いのではないでしょうか。

    しかし、営業の成果が属人化している限り、組織の成長は頭打ちになります。
    それは決して「営業力が足りない」からではありません。
    本当の原因は、営業が“個人の経験”に閉じていることにあります。

    営業の本質は、センスや根性ではなく「再現性のある構造」。
    そしてそれを実現するのが、デジタルセールスという新しい営業のあり方です。

    デジタルの力で営業活動を“見える化”し、ノウハウをチームで共有し、AIで仮説検証を高速化する。
    人がやるべきは、もはや「説明」ではなく「顧客の意思を動かすこと」。
    デジタルが営業を支え、人が価値を生み出す時代が始まっています。

    なぜ営業数字が伸びないのか──属人化という“見えない壁”

    多くの組織で「営業数字が伸びない」理由はシンプルです。
    営業が属人化しているから。

    例えばこんな状況はないでしょうか。

    • トップ営業だけが売上上位を占めている

    • そもそも“なぜ売れたのか”を誰も説明できない

    • 人を増やしても売上が比例して伸びない

    • 売れるための成功のポイントが共有されず、再現できない


    これらはすべて、「仕組みがない」ことの副作用です。
    つまり、組織として営業を“再現”できていない状態

    属人化の最大の問題は、成果の波が読めないこと。
    その結果、予算が立てられず、マネジメントが疲弊し、
    成長のボトルネックが“人”に集中してしまうのです。

    属人営業の根本原因──「営業力=センス」という誤解

    属人営業の根には、「営業はセンスでやるもの」という思い込みがあります。
    かつてはそれで通用しました。
    情報が少なく、営業が“情報提供者”だった時代は、
    どれだけ気に入られるか、どれだけ押し切れるかが成果を決めていたからです。

    しかし今や、顧客は営業よりも多くの情報を持っています。
    比較表、導入事例、口コミ、価格まですべて自分で調べられる。
    営業が“説明”する価値は、ほぼなくなったのです。

    顧客が求めているのは、

    「自社にこのサービスを当てはめるとどう成果が出るのか?」
    「導入後に何を変えるべきか?」

    という“文脈と解決策”。

    つまり営業に必要なのは、センスではなく顧客課題を構造的に理解し、実行支援する力です。
    そしてそれを再現可能な形で組織に落とし込むことこそ、デジタルセールスの出発点です。

    AI時代の営業に必要な考え方──“人×デジタル”の役割分担

    AIの進化は、営業の仕事を「人にしかできない領域」と「デジタルで支えられる領域」に分けました。

    AIが得意なのは、

    • 商談前の事前準備・リサーチ

    • SFA入力・商談議事録作成

    • 顧客行動のトラッキング
      といった定型的な処理や情報整理です。

    一方、本来人間が担うべきは、

    • 顧客の感情を読み取る

    • 意思決定を後押しする

    • 信頼関係を築く
      という非定型・感情的・戦略的な領域です。

    AIは営業を奪うのではなく、あくまで顧客の課題解決に時間と集中力を取り戻すためのツールです。
    定型業務をデジタルが担い、営業は人にしかできない価値創造に専念する。
    この分業構造こそが、AI時代の「デジタルセールス」です。

    デジタルセールスとは何か──“仕組みで成果を再現する営業”

    では、デジタルセールスとは何か。

    それは一言で言えば、

    営業をデジタルで仕組み化し、再現可能な成果を生むこと。

    属人に閉じていた「営業のやり方」を、デジタルの力で“チーム資産”に変える考え方です。

    デジタルセールスを構成する要素は4つ。

    1. People(人):営業人材を育成し、ナレッジを共有する

    2. Process(プロセス):営業ステップを標準化し、行動を可視化する

    3. Content(コンテンツ):顧客に刺さる提案資料や情報を体系化する

    4. Data(データ):商談・閲覧・成果データを分析し、改善を回す

    これらを連携させて営業活動を最適化する思想が、
    海外では「セールスイネーブルメント(Sales Enablement)」として体系化されています。

    営業組織が進化する4つのフェーズ

    ― 感覚に頼る営業から、自律して学ぶチームへ ―

    営業組織を強化したい。
    属人化をなくしたい。
    でも、どこから手をつけるべきか分からない──。

    そんな悩みを抱えるマネージャーや経営者の方は多いはずです。
    営業力の強化は、単なる“ツール導入”や“根性論”で実現するものではありません。
    組織には明確な成長のフェーズ(段階)があり、
    それぞれのフェーズに合ったアプローチを取ることで、はじめて成果が再現されます。

    この記事では、営業組織が成長していく過程を4つのフェーズに分け、
    それぞれの特徴・課題・次に進むためのヒントを解説します。
    あなたの営業組織はいま、どのフェーズにありますか?

    フェーズ1:属人営業期 ― 感覚と経験に頼る営業

    特徴

    • トップ営業が成果を出しているが、やり方は“感覚的”

    • 個人のスキルや経験に依存しており、再現が難しい

    • 「なぜ売れたのか」を言語化できていない

    課題

    • 属人化によって、チーム全体で成果が安定しない。

    • 新人が育ちにくく、営業ノウハウが属人的に閉じてしまう。

    次に進むために

    • トップ営業のやり方を言語化し、共有する

    • トーク例、資料構成、提案の流れなどをテンプレート化し、再現できる形にまとめる。

    これが「感覚営業」から「仕組み営業」への第一歩です。

    フェーズ2:可視化営業期 ― データで営業活動を“見える化”する

    特徴

    • SFA・CRMなどのツールを導入し、活動データを蓄積できる

    • 商談進捗や顧客状況をチームで共有できるようになった

    • 成果と行動の関係が少しずつ見え始めている

    課題

    • データは集まっているが、活用や分析がまだ限定的。

    • 「見えるようになった」だけで、実際の改善には結びついていない。

    次に進むために

    • 営業活動と成果の関係をデータで可視化し、分析する。

    • 「売れる営業」と「伸び悩む営業」の違いを明確にし、チーム全体で共有する。

    この段階では、“勝ちパターンの発見”が最大のテーマです。

    フェーズ3:仕組み営業期 ― 勝ちパターンを組織に埋め込む

    特徴

    • 成功パターンが見え始め、共通の「営業プロセス」が定義される

    • 商談資料・フォロー手順・会話スクリプトが標準化されてきた

    • チーム全体で同じ勝ち筋を再現できるようになってきた

    課題

    • 「仕組み」はあるが、まだ完全には浸透していない。

    • 一部の人だけが使いこなしており、運用ルールも曖昧になりがち。

    次に進むために

    • 成功パターンをツール・教育・マネジメントに仕組みとして組み込む

    • 定期的に仕組みを振り返り、改善できる体制を整える。

    フェーズ3では、「仕組みが人を支える営業組織」を目指します。

    フェーズ4:自律営業期 ― 学び続ける営業組織へ

    特徴

    • 市場や顧客の変化に柔軟に対応できる

    • AIやデータを活用し、営業活動を常にアップデートしている

    • 成功も失敗も組織の“学び”として共有・改善されている

    課題

    • 環境変化のスピードが速い中で、学習サイクルを止めないこと。

    • 個人・チーム・仕組みすべてが常に進化し続けることが求められる。

    次に進むために

    • AIや分析ツールを活用し、営業活動の改善サイクルを自動化

    • 成功・失敗データを蓄積し、ナレッジ共有を文化として定着させる。

    この段階では、営業組織が「自ら学び、成長を続ける」自律的なチームになります。

    フェーズ早見表:自社の“今”を見つけよう

    フェーズ

    状況

    主な課題

    改善の方向性

    フェーズ1

    感覚と経験に頼る営業

    属人化・再現性の欠如

    ノウハウを言語化・共有化

    フェーズ2

    データが集まり始めた営業

    データを活かせていない

    行動と成果の関係を分析

    フェーズ3

    仕組みが整い始めた営業

    運用・浸透が不十分

    勝ちパターンを定着・教育化

    フェーズ4

    学習し続ける営業

    継続的な改善

    データ×AIで自律的な成長へ

    営業の進化は「地図」を持つことから始まる

    営業組織の進化は、フェーズを飛び越えて進むことはできません。
    まずは自社の現在地(フェーズ)を正しく把握し、
    その段階に合った改善を進めることが、再現性ある成果への最短ルートです。

    感覚で動く営業から、見える営業へ。
    仕組みで動く営業から、自律して学ぶ営業へ。

    あなたの営業組織は、いまどのフェーズにありますか?

    属人を活かすためのデジタル化──“人間らしさ”を支える仕組みへ

    多くの人が「AI・デジタル化=人を減らす」と誤解していますが、実はそれは逆です。

    営業の価値は、「人が人に影響を与えること」にあります。
    だからこそ、人にしかできない時間を増やすためにデジタルがあるのです。

    • AIが資料をまとめるから、営業は顧客と深く話せる。

    • 商談データが共有されるから、チーム全体で顧客を支援できる。

    • 行動履歴が分析されるから、次の一手を科学的に打てる。

    デジタルは「人間らしい営業」を支えるインフラです。
    属人スキルを奪うのではなく、チームの中で活かすための基盤。
    これが、AI時代における真の営業DXです。

    まとめ──デジタルで営業を仕組み化し、“再現性ある成果”をつくる

    営業の成果が安定しないのは、個人の力量の問題ではありません。
    再現性を生む仕組みがないからです。

    • 属人化を解消し、

    • 営業プロセスをデジタルで見える化し、

    • データとAIで改善を回す。

    この3つが揃えば、営業はチームで勝てる仕事に変わります。

    営業は、センスで勝つのではなく、
    デジタルでセンスを再現する仕事へと進化している。

    デジタルセールスは、営業を機械的にするためのものではありません。
    むしろ、人が人らしく働くための仕組み化です。

    別の記事では、「再現性ある営業をつくる基本構造」と題し、
    プロセス・データ・仮説検証の3軸から、実際の設計法を解説しています。


    著者紹介:佐藤啓介(さとう けいすけ)

    株式会社エヌケーエナジーシステム/コレタ事業部 セールスエキスパート。
    SaaS営業・フィールドセールス・営業マネジメントに精通。
    営業DX推進・営業育成の両面から、企業の「属人営業脱却」を支援。
    現場で得た知見を「セールスハックナビ」やX(@keisuke_ssato)、noteで発信中。
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