社内稟議とは?決裁との違い・通らない理由と通してもらう5つの方法【BtoB営業】

社内稟議とは、購入や契約の可否を社内で審議し、決裁者の承認を得るプロセスです。会議を開くほどではない案件について、関係者が順に内容を確認し、最終的に権限を持つ人が承認します。
BtoB営業にとって重要なのは、この稟議が顧客の社内で起きていて、営業からは見えないという事実です。提案には好感触だったのに稟議で止まった、という失注はここから生まれます。
コレタが実施したBtoB意思決定の実態調査2026(n=100)は、その実態を示しています。91%の買い手は商談後に社内で何らかの行動を取っているにもかかわらず、その行動の約7割は営業に届いていません。
この記事では、まず社内稟議の基本(定義・決裁との違い・稟議書の書き方)を整理し、そのうえでBtoB営業の視点から、顧客の稟議が通らない理由と通してもらう方法を解説します。
この記事でわかること:
社内稟議とは何か、決裁・承認との違い
稟議書に必要な6項目と書き方
稟議が通らない5つの理由(調査データで解説)
買い手が稟議で本当に求めている資料
顧客の稟議を通してもらう5つの方法
1. 社内稟議とは
社内稟議とは、担当者が起案した内容について、関係者から順に承認を得て、最終的に決裁者の承認を取る社内手続きです。稟議は「上申して意見を伺う」という意味の言葉で、会議体を開かずに合意形成を進めるための仕組みです。
日本企業で広く使われている理由は3つあります。
意思決定の正当性を残せる:誰がいつ承認したかが記録に残ります
会議の手間を省ける:関係者を同時に集める必要がありません
責任の分散になる:複数人が承認するため、単独判断のリスクを避けられます
一方で、関係者が多いほど時間がかかり、途中で止まっても外からは見えないという弱点があります。BtoB営業が苦しむのは、この見えなさです。
1-1. 稟議と決裁・承認・決済の違い
混同されやすい4語を整理します。
用語 | 意味 | 主体 |
|---|---|---|
稟議 | 内容を回して承認を求めるプロセス全体 | 起案者が起点 |
承認 | 内容に問題がないと認める行為 | 関係者・上司 |
決裁 | 最終的に実行を決定する行為 | 決裁権を持つ人 |
決済 | 代金の支払いを完了させること | 経理・財務 |
稟議はプロセス、決裁はその最後に行われる決定です。決済は金銭の支払いを指す別の言葉で、稟議とは関係がありません。
BtoB営業が意識すべきは、承認する人と決裁する人が別であるという点です。窓口担当者が乗り気でも、承認ルートのどこかで止まれば案件は進みません。誰が決裁権を持つかの見極め方は決裁者とは?意思決定者との違い・見極め方・アプローチで詳しく扱っています。
1-2. 社内稟議の主な種類
内容によって、通るハードルも関係者も変わります。
購買稟議:備品・サービス・ツールの購入
システム導入稟議:SaaSや基幹システムの導入。金額が大きく関係部署も多い
契約稟議:業務委託、賃貸借、業務提携などの契約締結
投資稟議:設備投資や新規事業への投資
人事稟議:採用、異動、組織変更
BtoB営業が関わるのは主にシステム導入稟議と契約稟議です。この2つは情報システム部門・法務・経理が承認ルートに入ることが多く、窓口担当者だけでは進みません。
1-3. 社内稟議の一般的な流れ
起案:担当者が稟議書を作成する
事前の根回し:関係部署に内容を共有し、反対が出ないか確認する
回付:承認ルートに沿って順に回す
差し戻し・修正:不足があれば起案者に戻る
決裁:決裁者が承認し、実行が確定する
止まりやすいのは2番と4番です。事前の根回しが足りないと、回付の途中で差し戻されるためです。営業から見れば「連絡が来ない期間」がこの2〜4に相当します。
1-4. 稟議書に必要な6項目
稟議書の形式は企業ごとに異なりますが、内容は概ね共通です。
項目 | 書く内容 |
|---|---|
①件名 | 何を承認してほしいかを一文で |
②背景・課題 | いま何が問題で、放置するとどうなるか |
③提案内容 | 何を導入・契約するのか |
④費用 | 初期費用・月額・契約期間の総額 |
⑤期待効果 | 定量的な見込みと、その根拠 |
⑥リスクと対策 | 想定される懸念と、それへの備え |
書き方のコツは、②と⑤を結びつけることです。課題と効果が対応していない稟議書は、金額の話だけで判断されて落ちます。また⑥のリスクを自分から書くと、審議で反論が出にくくなります。
2. ここから先は、BtoB営業の視点です
ここまでは稟議を出す側の話でした。上で見た6項目を、顧客の担当者が書くことになるという事実に目を向けると、BtoB営業のやるべきことが変わります。
顧客の担当者は、あなたの提案書を見ながらこの6項目を埋めます。つまり稟議書の材料を渡しているのは営業です。材料が足りなければ、担当者は自分で調べ、自分の言葉で書きます。そこであなたのメッセージは変質します。
以下は、その構造をデータで見ていきます。
3. 前提:稟議は営業が見えないところで進んでいる
営業から見れば提案後の空白期間ですが、買い手にとってはここが本番です。調査が示す実態はこうです。
91%の買い手が、商談後に社内で何らかの行動を取っている(社内会議での説明、資料の社内共有など)
しかし、その行動の大半は営業に共有されていない
社内行動を営業に伝えなかった理由の最多は、社内の合意が得られていないうちに外部へ共有することへの抵抗(61.9%)
つまり、買い手の沈黙は興味がないサインではなく、まだ社内で固まっていないという合理的な選択です。営業がそろそろ連絡が来るはずと待っている間に、稟議は進み、そして止まっています。
買い手が沈黙を選ぶ心理は商談後に買い手が沈黙を選ぶ理由で解説しています。
4. 稟議が通らない5つの理由
理由①:決裁者に、あなたの提案が届いていない
BtoB購買の87%は複数人で意思決定しており、4名以上が関わるケースが64%にのぼります。ところが、意思決定者全員と話せた営業はわずか11.5%でした。
多くの案件では、過半数の意思決定者が営業と一度も話さないまま購買判断が下されています。あなたの提案は、決裁の場に届いていない可能性が高いのです。
理由②:提案が翻訳されて別物になっている
これが最も見落とされている理由です。
調査では、窓口担当者の57.1%が、営業から受け取った資料をそのまま使わず、自分なりにまとめ直した資料を作成して社内共有していました。営業資料をそのまま転送・共有しているのは35.1%にとどまります。
営業が丁寧に作り込んだ提案は、半数以上の案件でそのままでは使えないと判断されています。そして稟議の場に出るのは、担当者が再編集した資料——つまり、あなたのメッセージや強みが削ぎ落とされた別物です。
社内で使われる提案書の条件は営業提案書の作り方|受注につながる構成と社内共有される資料の条件にまとめています。
理由③:担当者が社内を説得する武器を持っていない
窓口担当者は、あなたの味方です。しかし彼らは社内説得のプロではありません。
専門用語だらけの提案書を渡されても、上司や他部署に説明できません。結果として、担当者の熱意はうまく説明できないという壁にぶつかり、稟議は前に進みません。
理由④:営業が電話・メールで確認しようとする
提案後のフォローを電話に頼る営業は多いのですが、営業電話の実態調査(n=250)では67.2%の購買担当者が営業からの電話に出ない・折り返さないと回答しています。
最も重要な稟議フェーズで、最も届かない手段を使っている。これが構造的なミスマッチです。電話が届かない時代の接点設計は電話営業が届かない時代のデジタルセールスルーム活用で扱っています。
理由⑤:検討が止まった理由が分からない
検討停滞の主因は、比較・判断が難しかった(37.8%)、情報が整理できなかった(38.9%)でした。しかし営業には、どこで詰まったのかが見えません。見えないものは改善できません。
比較・判断が難しくなる構造はBtoB購買で比較・判断が難しくなる理由で解説しています。
5. 買い手が稟議で本当に求めている資料
では、担当者は何があれば社内を説得できるのか。調査では、意思決定者への情報伝達にあると助かるコンテンツが明らかになっています。
順位 | 買い手が求めるコンテンツ | 割合 |
|---|---|---|
1位 | 社内の意思決定者向けに、専門用語を使わずわかりやすく説明した資料 | 35% |
2位 | 稟議書・社内申請に使える資料テンプレートや記入例 | 31% |
3位 | 競合他社との機能・価格・実績などの比較表 | 25% |
4位 | 社内の関係者に共有しやすい1枚資料(エグゼクティブサマリー) | 24% |
注目すべきは、上位を占めるのが意思決定者に情報を届けるためのコンテンツだという点です。
第1章で見た稟議書の6項目と並べると、対応が明確になります。買い手が求めているのは、②背景・課題と⑤期待効果を、専門知識なしで上司に説明できる形にしたものです。つまり買い手は、稟議を通すための武器を営業にくれと言っています。
6. 顧客の稟議を通してもらう5つの方法
方法①:そのまま社内で使える資料を渡す
57.1%が資料を作り直しているということは、裏を返せばそのまま使える資料を渡せば翻訳による劣化を防げるということです。
専門用語を使わない
1枚のエグゼクティブサマリーを添える
稟議に必要な項目(課題・効果・費用・導入時期・リスク)を網羅する
担当者が社内に転送する瞬間を想定して資料を作る。これが最も効く改善です。
方法②:稟議書に使えるテンプレートを提供する
31%の買い手が、稟議・社内申請に使えるテンプレートや記入例を求めています。これを用意している営業はほとんどいません。
導入効果・投資対効果・他社事例を、そのまま稟議申請に貼り付けられる形式で渡すだけで、担当者の負担は大きく下がります。第1章の6項目に沿った空欄フォーマットを渡すのが最も実務的です。
方法③:競合比較表を先に渡す
25%が比較表を求めています。他社と比較されたくないと考えて比較情報を出し渋ると、担当者は自分で比較表を作ることになり、そこであなたの強みは正しく書かれません。
先に公正な比較表を渡すほうが、結果的に自社に有利に働きます。
方法④:決裁者向けの説明を担当者経由で届ける設計にする
決裁者と直接会えないなら、担当者が決裁者に説明できる状態を作るしかありません。意思決定者ごとに関心事は異なります。
相手 | 関心事 |
|---|---|
現場担当 | 使いやすさ・工数削減 |
部門長 | チームの成果・受注率 |
経営 | 投資対効果・リスク |
この3層に対して、それぞれ読める資料を用意します。買い手起点で営業を設計する考え方はバイヤーイネーブルメントとは?買い手の意思決定を支援する営業、投資対効果の示し方はDSR導入のROI:成約率・商談サイクルへの効果を定量化するを参考にしてください。
方法⑤:稟議の進捗を聞くのではなく見る
最大の転換点がこれです。
電話やメールでその後いかがですかと聞いても、67.2%は出ません。そして61.9%は社内合意前だから話せないと考えています。聞いても、答えは返ってきません。
だからこそ、聞かずに見る仕組みが必要です。提案資料を顧客専用ページで共有すれば、次のことが分かります。
誰が・いつ・どの資料を・どこまで見たか
担当者が社内の誰に転送したか(新しい閲覧者の出現)
役員クラスが閲覧したタイミング
調査では83%の買い手が、専用の確認ページを社内検討で活用したいと回答しています。買い手自身が、社内共有しやすい形を求めているのです。
こんな企業に向いています
提案は好感触なのに、稟議フェーズで失注する案件が多い組織
提案後の進捗確認が電話とメールに頼っている組織
決裁者に提案が届いたかを確認する手段がない組織
このような課題に対しては、デジタルセールスルーム「コレタ for Sales」という選択肢があります。提案資料を顧客専用ページで共有し、閲覧ログから社内検討の進捗を捉えられるため、稟議が止まる前に手を打てます。→ コレタ for Sales の詳細はこちら
仕組みの全体像はデジタルセールスルームとは?意味・機能・おすすめツール比較と選び方で解説しています。
7. まとめ:稟議は待つものではなく支援するもの
社内稟議とは、購入や契約の可否を社内で審議し決裁者の承認を得るプロセスです。稟議はプロセス、決裁はその最後の決定行為という関係にあります
稟議書に必要なのは、件名・背景と課題・提案内容・費用・期待効果・リスクと対策の6項目です
その6項目を書くのは、顧客の担当者です。 材料を渡しているのは営業です
稟議が通らないのは提案が弱いからではなく、商談後の検討が営業から見えていないからです
91%が商談後に社内で動きますが、その約7割は営業に届きません。沈黙は拒否ではなく、社内合意前だから話せない(61.9%)という合理的判断です
57.1%が営業資料を自分でまとめ直しています。あなたの提案は翻訳され、稟議の場では別物になっています
買い手が求めているのは、専門用語を使わない説明資料(35%)、稟議に使えるテンプレート(31%)、比較表(25%)、1枚サマリー(24%)です
打ち手は、そのまま社内で使える武器を渡し、進捗は聞くのではなく見ることです
稟議は顧客の社内で起きる出来事です。しかし営業が関与できないわけではありません。担当者を社内の説明役として武装させ、その動きをデータで捉える。それが稟議を通す道筋です。
こんな企業に向いています
稟議用のテンプレートや1枚サマリーを整備していない組織
提案資料が意思決定者の関心に合っているか検証できていない組織
検討が止まった理由を案件ごとに説明できない組織
買い手側の実態をより詳しく知りたい方はBtoB購買担当者の実態2026:意思決定の裏側をご覧ください。意思決定の支援を営業の仕事として捉え直す考え方は意思決定支援型営業とは?BtoBで成果を出す新しい営業の形で扱っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 社内稟議とは何ですか?
社内稟議とは、購入や契約などの可否を社内で審議し、関係者の承認を経て決裁者の承認を得るプロセスです。会議体を開かずに合意形成を進めるための仕組みで、意思決定の記録が残る、会議の手間を省ける、責任を分散できるという利点があります。
Q2. 稟議と決裁の違いは何ですか?
稟議は承認を求めるプロセス全体を指し、決裁はその最後に行われる最終決定の行為を指します。稟議のなかで関係者が承認し、最後に決裁権を持つ人が決裁します。なお決済は代金の支払い完了を意味する別の言葉です。
Q3. 稟議書には何を書けばいいですか?
件名、背景と課題、提案内容、費用、期待効果、リスクと対策の6項目です。コツは背景・課題と期待効果を対応させることです。この2つが結びついていない稟議書は、金額の話だけで判断されて通りにくくなります。リスクを自分から書いておくと、審議で反論が出にくくなります。
Q4. 社内稟議はどこで止まりやすいですか?
事前の根回しと、回付後の差し戻しです。関係部署への事前共有が足りないと、回付の途中で差し戻されます。BtoB営業から見ると、連絡が来ない期間がこの工程に相当します。
Q5. 提案は好感触なのに稟議が通らないのはなぜですか?
提案が弱いからではなく、商談後の検討が営業から見えていないためです。調査では91%の買い手が商談後に社内で行動していますが、その約7割は営業に共有されていません。さらに57.1%が営業資料を自分でまとめ直して社内共有しており、稟議の場に出るのは営業のメッセージが削ぎ落とされた別物になっています。
Q6. 顧客が稟議の進捗を教えてくれません。どうすればいいですか?
聞いても答えは返ってきません。調査では、社内行動を営業に伝えない理由の最多が、社内の合意が得られていないうちに外部へ共有することへの抵抗(61.9%)でした。さらに67.2%は営業からの電話に出ません。聞くのではなく、提案資料の閲覧ログで見るほうが確実です。
Q7. 顧客の稟議を通すために、営業は何を渡せばいいですか?
調査では、買い手が求めるコンテンツの上位は、専門用語を使わずわかりやすく説明した資料(35%)、稟議書・社内申請に使えるテンプレートや記入例(31%)、競合比較表(25%)、共有しやすい1枚資料(24%)でした。稟議書の6項目に沿った空欄フォーマットを渡すのが最も実務的です。
Q8. 決裁者に直接会えない場合はどうすればいいですか?
担当者が決裁者に説明できる状態を作ります。BtoB購買の87%は複数人で意思決定し、意思決定者全員と話せた営業はわずか11.5%です。会えない前提で、担当者がそのまま社内に転送できる資料(1枚サマリー・比較表・稟議テンプレート)を用意し、閲覧ログで決裁者への到達を確認します。
🌟 「見えない稟議」を可視化したい方へ
コレタ for Salesは、提案資料を顧客専用ページで共有し、誰が・いつ・何を見たか、誰に転送されたかを可視化するデジタルセールスルームです。稟議が止まる前に、手を打てます。
最終更新: 2026年6月 | デジタルセールスナビ編集部


