インサイドセールスの立ち上げ手順|30-60-90日プランと組織・体制設計【実践版】

インサイドセールスの立ち上げは、人を採用して電話をかけ始めるだけでは機能しません。目的の定義、組織体制、ターゲットとKPIの設計、ツール整備、そして立ち上げ初期の改善サイクルまでを順序立てて進める必要があります。結論から言えば、立ち上げの成否は「最初の前提設計」と「初期90日の改善サイクル」でほぼ決まります。
本記事は、インサイドセールス(非対面営業)をこれから立ち上げる・立て直す方に向けた実践プレイブックです。全体像(定義・役割・KPIの基本)はインサイドセールスとは?役割・KPI・立ち上げ手順で解説しているので、本記事では「実際にどう動くか」に踏み込みます。
なぜ今インサイドセールスの立ち上げが重要なのか。コレタの営業電話の実態調査では、約3人に2人(67.2%)が営業電話に出ない・折り返さない一方、78.0%が「資料やデモ動画があれば電話なしでも検討を進められる」と回答しています。非対面で検討を支援できる体制を作れるかどうかが、これからの受注を左右します。
この記事で分かることは次の3点です。
立ち上げ前に決めるべき準備事項
採用・組織体制とKPIの設計方法
30-60-90日の立ち上げプランと、初期によくある失敗の回避策
1. 立ち上げ前に決める3つの前提
ツールや人を揃える前に、次の3点を固めます。ここが曖昧なまま走ると、後で全体がぶれます。
① 目的とKGI
「商談数を増やす」のか「受注額に貢献する」のかで、設計はまったく変わります。KGI(最終目標)を1つに絞り、そこから逆算します。目的が定まらないまま人を採用すると、追うべき指標も評価もぶれ、立ち上げは失敗します。
② 型(SDR/BDR)の選択
反響対応中心ならSDR型、新規開拓中心ならBDR型です。自社のリード獲得状況に合わせて選びます。両者はKPIも人材要件も異なるため、最初にどちらを主軸にするかを決めることが重要です。SDR/BDRの違いと使い分けはインサイドセールスとは?役割・KPI・立ち上げ手順で解説しています。
③ リードの担当範囲と引き渡し基準(SLA)
「どの状態のリードをインサイドセールスが担当し、どの基準でフィールドセールスへ渡すか」を先に決めます。ここが曖昧だと、後でISとFSの間で「質が低い」「追客が甘い」という対立が生まれます。連携設計とSLA・共通KPIの詳細はインサイドセールスとフィールドセールスのKPI連携を参照してください。ザ・モデル型の分業全体の設計はザ・モデルとは?4分業の仕組みと「情報分断」という落とし穴にまとめています。
2. 採用と組織体制の設計
立ち上げ期の人数と役割
立ち上げ初期は、1〜2名のスモールスタートが現実的です。最初から大人数を採用すると、トークやプロセスが固まる前に品質がばらつきます。まず少人数で「勝ち型」を作り、それを横展開します。
求める人物像
立ち上げ期は、マニュアルがない中で自ら改善できる人が向いています。傾聴力・仮説思考・データを見て動ける素養を重視します。完成された営業スクリプトを実行する人材ではなく、スクリプトそのものを作れる人材が、この時期には必要です。
レポートライン
インサイドセールスをマーケティング配下に置くか、営業配下に置くかは組織により異なります。重要なのは、マーケ・IS・フィールドセールスがKPIで連動する設計にすることです。どこの配下に置くかより、部門をまたいで同じゴールを見られるかが成否を分けます。この部門連携の考え方はマーケティングと営業の連携が進まない理由でも扱っています。
3. ターゲットとKPIの設計
ターゲットリードの定義
誰にアプローチするかを明確にします。業種・規模・役職・課題などでターゲットを定義し、そこに合うリードソースを設計します。ターゲットが曖昧だと、どれだけ架電しても商談化率が上がりません。
KPIの設計(概要)
立ち上げ期は、行動量だけを追うと疲弊します。行動量と質の両方をKPIに置きます。
段階 | 主なKPI |
|---|---|
行動量 | 架電数・接触数・メール送信数 |
質 | 有効会話数・商談創出数(アポ数) |
成果 | 有効商談率・受注貢献額 |
ただし、KPIの具体的な設計・運用(量・質・貢献の3層ピラミッドや、アポ数至上主義に陥らない設計)は奥が深いため、インサイドセールスのKPI設定完全ガイドで詳しく解説しています。立ち上げ段階では、まず「行動量」と「有効会話数・商談創出数」の最小セットから始め、型が固まってから成果KPIへ広げるのが現実的です。あわせてセールスパイプライン管理の視点を持つと、商談化以降の歩留まりまで設計できます。
見落としがちな前提:リード供給量の確認
立ち上げでよくある失敗が、「インサイドセールスの体制は作ったのに、そもそも捌くリードが足りない」というものです。SDR型で立ち上げる場合、マーケティングからのリード供給が前提になります。月にどれだけのリードが供給される見込みか、その質はどうかを、立ち上げ前に必ず確認してください。供給が細いのにSDR型で人を採用すると、架電するリードがなく、メンバーが手持ち無沙汰になります。
逆に、リード供給が不安定な段階では、自らアプローチするBDR型のほうが立ち上げやすい場合もあります。リード供給の実態に合わせて型を選ぶ——これも立ち上げ前に固めるべき前提の一つです。マーケティングとの連携をどう設計するかはマーケティングと営業の連携が進まない理由も参考になります。
4. 30-60-90日の立ち上げプラン
立ち上げを3つの期間に分け、各期のゴールを明確にします。期間ごとに「何を達成すれば次に進めるか」を定義するのが、この段階設計の狙いです。
〜30日:基盤づくり
目的・KGI・型・連携基準を確定
ターゲットリードとKPIを定義
トークスクリプト・メールテンプレート・共有資料の初版を作成
SFA/CRM・オンライン商談ツール・DSRを最低限セットアップ
この期間のゴールは「動き出せる状態を作る」ことです。完璧を目指さず、初版を作って走り始めることを優先します。トークスクリプトの初版づくりはインサイドセールスのトークスクリプトの作り方を参照してください。
31〜60日:試験運用と改善
有効会話数・商談創出数を週次でレビュー
トークとコンテンツを実データで改善
フィールドセールスへの引き渡しを試運転し、基準を調整
この期間は「回して直す」フェーズです。初版のトークやターゲット定義を、実際のデータをもとに修正していきます。ここで買い手の反応データがあると改善が速く、精度も上がります。
61〜90日:型化と横展開
成果の出たトーク・プロセスを「勝ち型」として標準化
KPIの基準値(ベンチマーク)を確定
増員や対象拡大の判断材料を整理
属人化を防ぐ型化(セールスイネーブルメントの型化)を進める
この期間のゴールは「再現できる状態を作る」ことです。少人数で見つけた勝ち型を、増員しても同じ成果が出る形に落とし込みます。ここを飛ばして増員すると、品質が薄まって立ち上げが崩れます。
5. 立ち上げ期のツール整備
最低限そろえたいのは、SFA/CRM・オンライン商談ツール・そして資料の閲覧状況を可視化するデジタルセールスルーム(DSR)です。
特にDSRは立ち上げ期に効果的です。少人数で回す立ち上げ期は、フォローの優先順位を正しく判断できるかが成果を左右します。送った資料が「誰に・どこまで見られたか」が分かれば、限られた人数でも「今フォローすべき相手」を正確に選べます。仕組みはデジタルセールスルーム(DSR)とはを参照してください。担当者の手入力に頼らずデータを蓄積する考え方はデータドリブン営業とはで解説しています。
このような非対面営業の立ち上げを支えるソリューションとして、AI搭載のデジタルセールスルーム『コレタ for Sales』があります。資料の閲覧ログ可視化・商談の自動要約・SFA連携により、立ち上げ初期から「見えない検討」をデータで把握し、勝ち型づくりを加速できます。少人数のうちから行動データを蓄積しておくと、後の横展開もスムーズです。→ コレタ for Sales の詳細はこちら
6. 立ち上げでよくある失敗と対策
いきなり大人数で始める → 1〜2名で勝ち型を作ってから増員する。型がないまま増やすと品質がばらつく。
フィールドセールスとの基準が曖昧 → 引き渡し基準(SLA)を明文化し、双方でレビューする。
行動量だけをKPIにする → 立ち上げ期こそ、有効会話数など質の指標を併用する(詳細はKPI設定完全ガイド)。
完璧なトークを作ろうとして走り出せない → 初版で始め、実データで直す。改善の速さが立ち上げの質を決める。
非対面の検討が見えないまま追客する → 資料の閲覧ログを可視化し、買い手が動いたタイミングでフォローする。
7. 立ち上げを「一過性」で終わらせない視点
30-60-90日で立ち上げが軌道に乗った後も、インサイドセールスは継続的に進化させる必要があります。ここで意識したいのが3点です。
第一に、勝ち型を「文書」ではなく「運用」に落とすこと。勝ちトークをマニュアル化しても、使われなければ意味がありません。新メンバーが自然に勝ち型を学べる仕組み(ロープレ・録画共有・データレビュー)まで設計して初めて、型化は完成します。
第二に、KPIのベンチマークを定期的に更新すること。立ち上げ期に定めた基準値は、市場や商材の変化で陳腐化します。四半期ごとに見直し、チームで合意し直すことが、成長し続ける組織の条件です。
第三に、非対面ゆえに溜まる行動データを資産化すること。立ち上げ初期から資料閲覧やメール反応をデータで残しておけば、それが横展開時の教材になり、増員後の立ち上がりを速めます。たとえば「受注につながった案件では、買い手がどの資料をどの順で見ていたか」というパターンが分かれば、それは新メンバーに渡せる最も実践的なノウハウになります。立ち上げ期の1件1件の行動ログを捨てずに蓄積することが、半年後・1年後のチームの立ち上がり速度を決めます。買い手の実態はBtoB購買の実態調査2026にまとめています。
まとめ
インサイドセールスの立ち上げは「目的→型→連携基準」の3前提を固めることから始める
立ち上げ期は1〜2名のスモールスタートで「勝ち型」を作る
KPIは行動量だけでなく質(有効会話数・商談創出数)を併用する(詳細はKPI正典を参照)
30-60-90日で「基盤づくり→試験運用→型化」とゴールを分けて進める
DSRなどで閲覧データを可視化すると、少人数でもフォロー精度が上がる
立ち上げの成否は、最初の前提設計と初期90日の改善サイクルで決まります。まずは目的とKGIの確定から着手しましょう。非対面の検討をデータで把握し、少人数でも成果の出る勝ち型を作りたい場合は、デジタルセールスルーム『コレタ for Sales』が有効です。→ コレタ for Sales の詳細はこちら
よくある質問(FAQ)
Q1. インサイドセールスの立ち上げは何から始めればいいですか? A. まず「目的とKGI」「SDR/BDRどちらの型か」「マーケ・フィールドセールスとの境界(SLA)」の3点を固めます。ツールや採用はその後です。前提が曖昧なまま走ると全体がぶれるため、設計を先に行うことが成功の鍵です。
Q2. 立ち上げ時は何人で始めるべきですか? A. 1〜2名のスモールスタートが現実的です。最初から大人数だと、トークやプロセスが固まる前に品質がばらつきます。少人数で「勝ち型」を作り、それを横展開する順序が、失敗を避けるうえで有効です。
Q3. 立ち上げ期のKPIは何を設定すればいいですか? A. 行動量(架電数・接触数)に加え、質のKPI(有効会話数・商談創出数)を併用します。立ち上げ初期に行動量だけを追うと疲弊し、定着しません。成果KPI(有効商談率・受注貢献額)は型が固まってから重視します。KPIの詳しい設計はインサイドセールスのKPI設定ガイドを参照してください。
Q4. 立ち上げにはどのくらいの期間がかかりますか? A. 目安は30-60-90日です。〜30日で基盤づくり、31〜60日で試験運用と改善、61〜90日で型化と横展開、というように期間ごとのゴールを分けて進めると、立ち上げが安定します。
Q5. インサイドセールスはマーケティングと営業のどちらの配下に置くべきですか? A. 組織により異なり、絶対的な正解はありません。重要なのは配下の位置よりも、マーケ・IS・フィールドセールスが同じKPIで連動する設計になっているかです。どこに置いても、部門をまたいで同じゴールを共有できれば機能します。
Q6. 立ち上げ期にツールはどこまで揃えるべきですか? A. 最低限、SFA/CRM・オンライン商談ツール・DSR(資料の閲覧可視化)があれば動き出せます。すべてを完璧に揃えてから始めるより、最小セットで走り、運用しながら拡張するほうが現実的です。特に少人数の立ち上げ期は、DSRで「今フォローすべき相手」を判断できると、限られた工数を有効に使えます。
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最終更新: 2026年6月 | デジタルセールスナビ編集部

