ソーシャルリスニングとは?顧客の声を聞く方法と、SNSに現れない声の捉え方

ソーシャルリスニングとは、SNS・ニュース・ブログ・口コミサイトなど、インターネット上に公開されている生活者や企業の声を収集・分析し、市場や自社ブランドへの示唆を得る手法です。 自社への言及だけを追うエゴサーチと違い、自社に言及していない投稿も対象に含め、「世の中で何が語られているか」を捉えます。
アンケートやインタビューと違って、ソーシャルリスニングが拾うのは尋ねられていないのに自発的に語られた声です。そこに価値があります。
一方で、公開の場で語られる声がすべてではありません。特にBtoBでは、購買の検討は商談や社内会議といった非公開の場で進むため、その過程はSNS上にほとんど現れません。顧客の声を聞くには、「公開されている声」と「公開されない声」を分けて考え、それぞれに適した手段を用意する必要があります。
この記事でわかること:
ソーシャルリスニングの定義・仕組み・類似手法との違い
AI時代に一次情報としての「顧客の声」が重要になっている理由
公開されている顧客の声を集める5つの方法と、ツールの選び方
SNSに現れない声をどう捉えるか
ソーシャルリスニングとは
定義と仕組み
ソーシャルリスニングとは、インターネット上に公開されている言論を収集・分析し、顧客理解や市場理解に活かす手法です。仕組みは次の3段階で構成されます。
収集:キーワードや条件式(ブーリアン検索)を設定し、対象となる投稿・記事を自動で集める
分析:言及量の推移、感情の傾向(ポジティブ/ネガティブ)、頻出する語、影響力の大きい発信者などを集計する
示唆化:集計結果から、関心の移り変わりや競合の評価、自社への評判を読み取る
人力のエゴサーチと異なり、専用ツールを使うことで数万〜数百万件規模の言及を継続的に追跡できます。
アンケート調査との違い
顧客の声を集める手段としてまず挙がるのはアンケートやインタビューですが、性質が大きく異なります。
アンケート・インタビュー | ソーシャルリスニング | |
|---|---|---|
声の性質 | 尋ねられて答えた声 | 自発的に語られた声 |
対象 | 調査対象として選んだ人 | 発信している人全般 |
設問の制約 | 設計した質問の範囲内 | 想定外の話題も拾える |
時間軸 | 実施した時点のスナップショット | 継続的な推移 |
弱み | 建前や回答バイアスが入りやすい | 発信しない層の声は拾えない |
どちらが優れているという話ではなく、聞ける声の種類が違うというのが正確です。アンケートは仮説の検証に、ソーシャルリスニングは仮説の発見に向いています。
エゴサーチ・SNS分析との違い
混同されやすい3つの用語も整理しておきます。
手法 | 対象範囲 | 主な目的 | 継続性 |
|---|---|---|---|
エゴサーチ | 自社・自社製品名 | 自社の評判確認 | 都度・手動 |
SNS分析 | 自社アカウントの投稿 | 投稿の反応測定 | 定期・自動 |
ソーシャルリスニング | 市場・競合・自社を含むWeb全体 | 市場理解・戦略立案 | 常時・自動 |
ソーシャルリスニングは、自社に言及していない投稿も対象に含める点が決定的に異なります。「自社がどう見られているか」ではなく「世の中で何が語られているか」を捉える手法です。
取得できるデータソース
対象となるのは、公開されている情報全般です。
SNS(X、Facebook、Instagram、YouTubeのコメントなど)
ニュースサイト、業界メディア、プレスリリース
ブログ、口コミサイト、レビューサイト
テレビ、ラジオ、ポッドキャストなどの放送メディア
扱う商材によって、どのソースが効くかは変わります。消費財であればSNSと口コミサイトの比重が高く、法人向けの商材であればニュース・業界メディア・プレスリリースの比重が高くなります。
なぜ今、顧客の声を聞く手段が問われているのか
AIが要約する時代、価値が残るのは一次情報
顧客の声を聞く重要性が改めて増している最大の理由は、AIの普及によって二次情報の価値が急速に下がったことです。
すでにWeb上にある情報をまとめ直しただけのコンテンツは、AIが数秒で生成できます。検索結果でもAI Overview(AI概要)が要約を返すようになり、「どこかに書いてあることを整理した記事」は読まれる前に代替されるようになりました。
一方で、AIが生成できないものがあります。自社でしか持っていない一次情報です。自社が実施した調査、自社が集めた顧客の声、自社の現場でしか観測できないデータ。これらは学習データにもWeb上にも存在しないため、AIが作り出すことができません。
この差は、3つの場面で効いてきます。
場面 | 一次情報が効く理由 |
|---|---|
コンテンツ・AIO対策 | AIが回答を生成する際、引用元として選ばれるのは独自データを持つ情報源。一般論を書いた記事は引用されない |
製品・サービス開発 | AIに分析させるにしても、投入するデータが他社と同じなら出てくる示唆も同じになる |
提案・コミュニケーション | 「一般的には」で始まる話は相手もAIに聞ける。固有の観測に基づく話だけが情報価値を持つ |
つまり、顧客の声を集めるという行為そのものが、AI時代における差別化の原資になりました。かつては「顧客理解のため」だった一次情報の収集が、いまは「AIに置き換えられない資産づくり」という意味も帯びています。AI活用全般の動向はAI営業の最新ガイドでも整理しています。
ソーシャルリスニングは、この一次情報を継続的に集める手段のひとつです。ただし後述するとおり、公開の場で語られる声だけでは足りません。
顧客は、企業に聞かれる前に情報を集め終えている
顧客の声を聞く重要性は昔から言われてきました。それがいま改めて問われているのは、顧客が情報を得る経路が企業の外側に移ったからです。
コレタが実施したBtoB購買実態調査(2026年1月、n=180)では、63.3%の購買担当者が初回商談の時点で「すでに知っている内容が多い」と感じたと回答しています。また、38.3%がChatGPTなどのAIを情報収集に活用していました。
企業が説明を始める前に、顧客はWebサイト、比較サイト、口コミ、AIを通じて理解を終えている。この順序が逆転したことで、企業側は「自社が発信した情報への反応」だけを見ていても顧客を理解できなくなりました。詳しくはBtoB購買でのAI活用実態データで解説しています。
自社に届く声は、氷山の一角にすぎない
顧客理解を深めようとするとき、多くの企業がまず見るのは自社に蓄積されたデータです。問い合わせ内容、アンケート結果、商談履歴、解約理由。これらは確かに有用ですが、ひとつ構造的な制約があります。
自社に届く声は、「自社と接点を持った人」の声だけだということです。つまり、次のような声は最初から含まれていません。
まだ自社を知らない人が、どんな不満や願望を語っているか
競合の製品やサービスが、どう評価されているか
業界全体で、どんなテーマへの関心が高まっているか
検討したが自社を選ばなかった人が、どこで離れたか
市場の変化に気づくのが遅れるとき、その原因はたいてい情報源が自社に閉じていることにあります。データドリブンな意思決定の質は、どのデータを見ているかで決まります。この欠落を埋める手段が、ソーシャルリスニングです。
公開されている顧客の声を集める5つの方法
① 市場・業界トレンドの把握
特定のキーワードの言及量推移を追うことで、関心がどこに向かっているかを定量的に把握できます。言及量が伸びているテーマは、市場全体の関心が高まっているサインです。
肌感覚で「最近このテーマをよく聞く」と感じていたことを、数字で裏づけられるようになります。
② 競合の評判のモニタリング
競合企業名・製品名を監視対象に設定すると、次のような変化を早期に検知できます。
新機能のリリースと、それに対する市場の反応
価格改定や方針転換に関する言及
障害・トラブルなどネガティブな評判の発生
競合がどう評価されているかは、自社の立ち位置を測る基準にもなります。
③ 顧客の言葉づかいの発見
同じ課題でも、企業側が使う用語と顧客が使う言葉は違います。ソーシャルリスニングで実際の投稿を集めると、顧客がどんな言葉で悩みを表現しているかが見えてきます。
これはコピーやコンテンツの言葉選びに直結します。製品用語ではなく顧客の言葉で課題を言い当てられると、伝わり方が変わります。
④ 評価軸の抽出
蓄積された言及データから、顧客が何を基準に比較しているかを読み取れます。価格なのか、導入の手軽さなのか、サポート体制なのか。市場で語られている優先順位を知っていれば、訴求の組み立てを変えられます。
⑤ リスク管理
自社ブランドに関するネガティブな言及の急増を検知し、早期に対応できます。炎上の兆候を初期段階でつかめるかどうかは、対応コストを大きく左右します。
ソーシャルリスニングツールの選択肢
こうした分析を継続的に回すには、専用ツールが必要です。代表的なツールのひとつが、メディア・ソーシャル・消費者インテリジェンス領域でグローバルに展開するMeltwater社のソーシャルリスニングツールです。
同社のツールは次のような機能を備えています。
SNS・ブログ・口コミ・ニュース・放送メディアまで含む広範なデータソースへの対応
ブーリアン検索を補助するAIアシスタント機能
感情分析(センチメント分析)と画像認識
日次・週次・月次の自動レポート生成とカスタムアラート
15か月分の履歴データを使った長期トレンド分析
APIによる外部システム連携
ツールを選ぶ際は、扱う商材に合ったデータソースをカバーしているか、そして日本語のデータをどこまで正確に処理できるかを確認することをおすすめします。法人向け商材を扱う場合は、SNSよりニュース・業界メディアの網羅性が効いてきます。
SNSには現れない顧客の声もある
公開の場で語られない領域
ソーシャルリスニングで拾えるのは、あくまで公開の場に出された声です。当然ながら、公開されていない声は対象外になります。
この差が最も大きく出るのが、法人の購買検討です。稟議書に書かれた懸念、社内会議での議論、比較表に並べた評価、決裁者からの差し戻し。これらがSNSに投稿されることはまずありません。守秘義務の観点からも、検討の手の内を明かさない観点からも、当然のことです。
消費財であれば、購入後の感想がSNSに流れる可能性は十分にあります。しかし法人の購買では、検討の過程も結果も、外に出ないまま完結するのが普通です。
見えない場所で、何が起きているか
では公開されない場所で何が起きているのか。コレタの調査データが、その一端を示しています。
73.9% が「営業が関与しない状態で社内検討が進んだ」
72.8% の案件で「意思決定者全員に売り手の情報が届いていない」
67.2% が営業電話に「出なかった・折り返さなかった」経験を持つ(2026年3月、n=250)
電話に出なかった後も 38.7% が「自分で情報収集を続けた」
3つ目と4つ目の数字が示すのは、接触が途絶えた期間も検討は進んでいるということです。連絡が取れないことと、関心を失ったことは別です。
さらに、検討が停滞した理由の上位は「比較・判断が難しかった」43.2%、「情報が整理できなかった」35.6%でした。顧客は情報が足りないのではなく、整理できていない。この不満は、本人が口に出さない限り誰にも届きません。関連する構造はBtoBの比較・判断が難しい理由や「営業不要」時代の戦略でも扱っています。
語られない声を、行動から読み取る
公開されない声を捉えるには、別のアプローチが要ります。言葉として語られないなら、行動から読み取るという考え方です。
提供した資料の何ページを、誰が、どのくらいの時間見たか
共有したURLが、社内の何人に転送されたか
商談後にどの資料が再閲覧されているか
これらは自社の接点上で発生するため、観測できます。「資料が社内で転送された」「価格ページが繰り返し見られている」といった行動は、言葉にならない関心や迷いのサインです。
こうした行動の可視化を担う仕組みとして、デジタルセールスルーム(DSR)があります。資料・動画・商談録画をひとつのオンラインページにまとめ、閲覧ログから顧客の関心を読み取るプラットフォームです。定義や導入効果はデジタルセールスルームとはで解説しています。
語られない声を行動から読み取る手段として、AI搭載のデジタルセールスルーム「コレタ for Sales」があります。 → コレタ for Sales の詳細はこちら
「公開されている声」と「公開されない声」の補完関係
2つの声を分けて捉える
顧客の声は、次の2つに整理できます。
区分 | 何が聞けるか | 聞く手段 |
|---|---|---|
公開されている声 | 市場の関心、競合の評価、顧客の言葉づかい、自社の評判 | ソーシャルリスニング |
公開されない声 | 特定の検討における懸念、迷い、社内での扱われ方 | 行動ログ、DSR、商談記録 |
重要なのは、この2つが代替関係ではなく補完関係にあることです。
公開されている声だけを見ていると、市場の空気はつかめても、目の前の顧客が何に迷っているかはわかりません。公開されない声だけを見ていると、既存の接点は深められても、まだ出会っていない人の関心には気づけません。
組み合わせて回す
2つを組み合わせた顧客理解は、次の順序で設計できます。
ステップ1:公開されている声から仮説を立てる ソーシャルリスニングで市場の関心テーマと競合の評価を把握し、「顧客はいまこういう課題を抱えているのではないか」という仮説をつくります。
ステップ2:仮説をコンテンツに落とす その仮説に沿った資料・事例・比較情報を用意します。顧客が使っている言葉で課題を言語化することがポイントです。
ステップ3:反応を行動から観測する 提示したコンテンツのうち、どれが実際に見られ、共有されたかを確認します。ここで仮説の当たり外れが検証されます。
ステップ4:観測結果を次の仮説に戻す 反応の良かったテーマは市場全体でも需要がある可能性が高く、公開情報の分析軸を見直す材料になります。
この循環を回すと、市場全体の理解と個別の関係構築が連動します。
よくある失敗
分析レポートを出して満足してしまう:示唆は出るが、施策に接続されない
商材の性質を無視して手法を借りる:法人向け商材はSNS上の言及量が少なく、消費財と同じ精度は出ない
ツール導入が目的化する:何を判断するためのデータかを決めずに導入すると使われなくなる
いずれも「公開情報から得られる範囲」を正しく見積もれていないことが原因です。
まとめ
ソーシャルリスニングとは、SNS・ニュース・口コミなど公開されている声を収集・分析し、市場や自社への示唆を得る手法
AIが二次情報を瞬時に生成できるようになった結果、自社でしか持たない一次情報の価値が上がった。顧客の声を集める行為そのものが差別化の原資になる
アンケートが「尋ねて得る声」なのに対し、ソーシャルリスニングは自発的に語られた声を拾う。仮説の検証ではなく発見に向く
エゴサーチ(自社名のみ)やSNS分析(自社アカウントの反応)と異なり、自社に言及していない投稿も対象に含める
活用方法は、市場トレンドの把握、競合の評判モニタリング、顧客の言葉づかいの発見、評価軸の抽出、リスク管理
ただし公開の場で語られない声もある。特に法人の購買検討は、過程も結果も外に出ないまま完結することが多い
コレタの調査では、73.9%が売り手の関与しない状態で社内検討を進めていた
語られない声は、行動から読み取るしかない。資料の閲覧ログや社内共有の動きがその手がかりになる
2つの声は補完関係にあり、仮説立案→コンテンツ提示→反応観測→仮説更新の循環で顧客理解が深まる
顧客の声を聞くとは、語られた声を集めることだけを指しません。語られなかった声をどう捉えるかまで含めて設計したとき、顧客理解はひとつ先に進みます。
調査レポートの全文は以下から無料でダウンロードいただけます。
よくある質問(FAQ)
Q1. ソーシャルリスニングとは何ですか?
SNS・ニュース・ブログ・口コミサイトなど、インターネット上に公開されている声を収集・分析し、市場や自社ブランドに関する示唆を得る手法です。自社への言及だけを追うエゴサーチと異なり、自社に言及していない投稿も含めて「世の中で何が語られているか」を捉える点が特徴です。
Q2. ソーシャルリスニングとSNS分析の違いは何ですか?
SNS分析は自社アカウントの投稿に対する反応(いいね、リーチ、エンゲージメント)を測定するものです。一方ソーシャルリスニングは、自社アカウントの有無に関わらず、Web上で語られている声全体を対象とします。前者は自社の発信効果の測定、後者は市場理解が目的です。
Q3. AI時代に顧客の声を集めることは、なぜ重要なのですか?
AIはWeb上にすでにある情報なら瞬時に要約・生成できますが、自社でしか持たない一次情報は生成できないためです。AI Overviewが引用する情報源として選ばれるのも、AIに分析させて他社と違う示唆を得られるのも、独自の一次情報を持っている場合に限られます。顧客の声を継続的に集めること自体が、AIに置き換えられない資産づくりになります。
Q4. アンケート調査があれば、ソーシャルリスニングは不要ですか?
聞ける声の種類が違うため、代替にはなりません。アンケートは設計した質問に対する答えを集めるもので、仮説の検証に向いています。ソーシャルリスニングは尋ねていないのに語られた声を拾うため、想定外の話題や新しい関心の発見に向いています。
Q5. 法人向け商材でもソーシャルリスニングは有効ですか?
有効ですが、使いどころが異なります。法人向け商材はSNS上の投稿量が限られるため、SNSよりニュース・業界メディア・プレスリリースの分析比重が高くなります。個別の商談推進よりも、市場トレンドの把握や競合モニタリングといった全体把握での活用が中心になります。
Q6. SNSに現れない顧客の声は、どうすれば捉えられますか?
言葉として語られない以上、行動から読み取ることになります。提供した資料のどこが読まれたか、社内の誰に共有されたか、どのページが繰り返し見られているか。こうした行動データは、関心の所在や迷いのサインとして解釈できます。コレタの調査では73.9%が売り手の関与しない状態で検討を進めており、この期間の把握には行動データが必要になります。
Q7. ソーシャルリスニングツールを選ぶ際のポイントは何ですか?
①扱う商材に合ったデータソース(SNS中心か、ニュース・業界メディア中心か)をカバーしているか、②日本語データの処理精度、③分析結果を定期レポートとして自動配信できるか、の3点が重要です。加えて、何を判断するためのデータかを導入前に定義しておかないと、レポートが出るだけで使われなくなります。


