商談ゼロで受注は起きるのか|導入2週間で受注率135%アップ、キャスターのDSR活用【事例】

商談を1回も行わないまま受注が決まる。株式会社キャスターでは、デジタルセールスルーム(DSR)の導入から2週間で、これが2〜3件起きました。同じ期間で受注率は135%、商談設定率は122%に向上しています。
特別な裏技があったわけではありません。買い手が自分のペースで判断できる材料を先に渡し、その反応を見てから動く。この順番に変えただけです。この記事では、キャスターが何を変えたのか、そして他社が再現するには何が必要かを解説します。
この記事で分かることは、次の4点です。
商談ゼロの受注が起きた背景と、その前にあった課題
実際の運用(7つのステップ)
成果の数字と、何が効いたのか
他社が再現するための条件と、向かないケース
事例の詳細(インタビュー本文)は株式会社キャスターの導入事例でご覧いただけます。
1. 前提:説明する営業の価値が下がっている
キャスターは、リモートワークを前提としたオンラインアシスタントサービスを提供する上場企業です。取り組みのきっかけは、経営からの問いかけでした。営業の説明はなくなり、動画とセルフサーブに置き換わっていくのではないか。
この問いは、キャスター固有のものではありません。コレタが2026年1月に実施した独自調査(n=180)では、購買判断の材料として「営業担当者の説明」を挙げた人は11.1%で、9項目中の最下位でした。同じ調査で73.9%が「営業がいない場で社内検討が進んだ」と回答しています。買い手の実態はBtoB購買の実態調査2026にまとめています。
キャスターは上場後、プロダクト主導の獲得から営業主導の獲得へ軸足を移していましたが、転換率が伸び悩んでいました。営業の人数と接触の回数を増やす方向では、限界が見えていた状態です。
2. 何を変えたのか|運用の7ステップ
キャスターが実際に回している流れは、次の7つです。
ステップ | 内容 |
|---|---|
1 | 問い合わせが入ったら、DSRのルームへ自動で招待する |
2 | ルームに、7分程度の概要動画・比較資料・導入事例を置く |
3 | 顧客がルームで何を見たかを、リアルタイムでSlackに通知する |
4 | 必要な顧客だけ、動画を見たうえで商談を設定する |
5 | 閲覧のデータをHubSpotに連携し、案件情報と突き合わせる |
6 | AIチャットで、確認レベルの質問に自動で答える |
7 | 契約までをルーム内で完結させる |
ポイントは、商談を入り口にしていないことです。従来は、問い合わせ→商談設定→説明→検討、という順番でした。それを、問い合わせ→材料を渡す→反応を見る→必要なら商談、に変えています。
この進め方の考え方は非同期営業とは?意味・進め方・使い分け、仕組みの全体像はデジタルセールスルームとは?機能・比較・選び方で解説しています。
7分の動画が果たした役割
象徴的な出来事がありました。一度は社内の反対を理由に検討を見送った企業で、ルームに招待された後、その会社の社長が7分の概要動画を視聴し、6か月の契約を即決したのです。
営業は、その社長と一度も話していません。営業が同席できない場所に、営業の代わりになる材料が届いた結果です。この構造はBtoBで意思決定者全員に届いた営業はわずか1割でも扱っています。意思決定者全員と営業が直接話せた案件は11.5%しかありません。動画は、その残り89%に届く手段になります。
3. 成果
指標 | 変化 |
|---|---|
受注率 | 135%に向上 |
商談設定率 | 122%に向上 |
商談ゼロでの受注 | 導入2週間で2〜3件 |
新人の立ち上がり期間 | 50%短縮(入社2週間の新人が平均の3倍の転換率を記録) |
注目したいのは、受注率と商談設定率が同時に上がっている点です。商談を減らしたのに商談設定率が上がったのは、動画を見た人だけが商談に進むようになり、温度の高い相手と話す比率が上がったためと考えられます。
もう1つは、新人の立ち上がりです。説明の質が個人の力量に左右されなくなると、経験の差が成果に出にくくなります。トップ営業の説明を動画と資料に置き換えることは、型化とは?読み方・意味・営業組織への活用法で扱っている型づくりそのものです。育成を含めた組織の設計はセールスイネーブルメントとは?意味・3層フレームワークと進め方で解説しています。
こんな企業に向いています——問い合わせ数に対して商談の設定が追いつかない、説明に時間を取られている、新人の立ち上がりに時間がかかる。デジタルセールスルーム『コレタ for Sales』は、資料・動画・FAQを顧客ごとのページにまとめて届け、閲覧の動きを営業に知らせます。→ コレタ for Sales の詳細はこちら
4. 他社が再現するための4つの条件
キャスターの成果は、ツールを入れたから出たものではありません。再現するには、次の4つが必要です。
条件① 説明を動画に置き換える
最初にやるべきは、毎回の商談で話している説明を録画することです。完璧な動画をつくる必要はありません。7分前後で、課題・解決策・他社との違い・費用感が分かる構成であれば十分です。
条件② 判断に必要な材料をそろえる
動画だけでは決裁は通りません。比較資料、同業種の事例、費用対効果の試算、よくある質問への回答をセットで置きます。どんな種類が必要かはバイヤーイネーブルメントのコンテンツ7種類と作り方にまとめています。
条件③ 反応が見える状態にする
閲覧の動きが見えないと、いつ誰に連絡すべきかが分かりません。キャスターはSlackへの通知とHubSpot連携で、反応をその場で拾える状態をつくりました。読み取り方は買い手の購買シグナルを検知する方法、案件データとのつなぎ方はデジタルセールスルームとSFA/CRMの違いで解説しています。
条件④ 商談を「必要な人だけ」に絞る勇気を持つ
最も難しいのがこれです。商談数を追っている組織では、商談を減らす判断がしにくくなります。指標を商談数から、閲覧率・関与人数・受注率に切り替えることが前提になります。
5. 商談ゼロが向かないケース
正直に書きます。すべての商材で商談ゼロが成立するわけではありません。
向いているケース | 向かないケース |
|---|---|
商材の説明が定型化できる | 要件定義が必要で、毎回設計が変わる |
価格体系が明確 | 個別見積もりが前提 |
中小〜中堅企業が主な顧客 | 大企業で、複数部門の調整が必要 |
検討者が自分で判断できる裁量を持つ | 稟議の階層が深い |
大企業向けや高額な案件では、商談ゼロではなく商談の回数を減らし、1回の密度を上げる方向が現実的です。その場合も、材料を先に渡して反応を見る順番は同じです。検討が止まる構造はBtoB購買の検討が止まる原因、沈黙の理由は商談後に買い手が沈黙を選ぶ理由で解説しています。
6. 最初の30日で何をするか
キャスターの進め方を、他社が試せる形に落とすと次のようになります。
1週目:商談の説明を録画し、7分程度に編集する。比較資料とFAQを1つにまとめる
2週目:新規の問い合わせのうち5件だけ、商談の前にルームを送る運用にする
3週目:閲覧のデータを見て、動画を最後まで見た人にだけ商談を打診する
4週目:商談に進んだ案件と進まなかった案件で、受注率と検討期間を比べる
いきなり全案件で切り替える必要はありません。5件の比較データが出れば、社内を説得できます。
こんな企業に向いています——説明の商談に時間を取られている、決裁者に会えないまま失注している、新人の立ち上がりを早めたい。コレタ for Salesは、買い手が自分のペースで判断できる環境をつくるデジタルセールスルームです。→ コレタ for Sales の詳細・資料請求はこちら
よくある質問(FAQ)
Q1. 商談をせずに受注することは本当に可能ですか? A. 商材と顧客層によりますが、可能です。キャスターでは、デジタルセールスルームの導入から2週間で、商談を行わないままの受注が2〜3件発生しました。説明が定型化でき、価格体系が明確で、検討者に一定の裁量がある商材ほど成立しやすくなります。
Q2. 動画はどのくらいの長さが適切ですか? A. キャスターが用意したのは7分程度の概要動画です。長さより、課題・解決策・他社との違い・費用感が一通り分かることが重要です。詳細は別の動画や資料に分け、最初の1本は短く保つほうが視聴されます。
Q3. 商談を減らすと、受注数も減りませんか? A. キャスターでは受注率が135%、商談設定率が122%に向上しました。動画を見た人だけが商談に進むようになり、温度の高い相手と話す比率が上がったためと考えられます。商談の数ではなく、受注率と検討期間で評価することが前提になります。
Q4. 決裁者が動画を見てくれるとは限らないのでは? A. 見てもらえる確率は、届け方で変わります。キャスターの例では、担当者経由でルームのURLが共有され、その会社の社長が7分の動画を視聴して契約を決めました。担当者が社内で共有しやすい形(URL1つ、ログイン不要)にすることが条件です。
Q5. 何から始めればよいですか? A. 商談で毎回話している説明を録画するところからです。編集は後で構いません。次に、比較資料とFAQをまとめ、新規の問い合わせ5件だけで試します。閲覧データが取れる形にしておくと、効果を数字で確認できます。
Q6. 新人の育成にも効果がありますか? A. あります。キャスターでは新人の立ち上がり期間が50%短縮し、入社2週間の新人が平均の3倍の転換率を記録しました。説明の質が個人の力量に左右されなくなるためです。
Q7. 自社でも同じ成果が出ますか? A. 同じ数字が出るとは限りません。商材の説明が定型化できるか、価格が明確か、検討者に裁量があるかで結果は変わります。まずは5件で試し、自社の数字で確認することをおすすめします。


